眠気と死

早番だった。めちゃくちゃ眠くて、何をしていたのかあんまり思い出せない。

掃除してた……と、思う。多分。

お昼ご飯を食べてちょっと休憩してから、最近開けるたびに音が響く棚の扉を掃除した。

まあ、掃除だけではどうにもならなかったんだけど。

通りかかった常務に声をかけられて「ここめっちゃうるさいんですよ」と伝えたら専務も来て、扉のレールに何かスプレー吹きかけてくれた。

音が静かになった。感動して意味もないのに何度も開閉してしまった。

高い音が嫌いなので、ひとつストレスが減った。良い日だ。

色々片づけをして、定時よりも早く帰れたのも良かった。

 

身内の死に触れているブログを読んだ。

自分が初めて人の死に触れたのは、多分小学生の時だ。

母方の祖母の姉妹だった、と思う。あまり話した記憶が無い。祖母の妹の家で会っていたことだけは覚えている。

葬式には出たんだろうか。それもよく覚えていない。法事で親戚一同が集まることは何度かあったからだ。

会わなくなったな、と思ったかどうかもわからない。

ただ、血のつながりがある人が亡くなったのは、その時が初めてだ。

 

次は父方の曾祖母だった。中学の時だったと思う。制服を着ていたことを覚えている。

曾祖母が入院している病院に行ったことも覚えている。

清潔な匂いの中に、つん、と鼻の奥を刺す異臭を感じた。清潔な布に、一点だけ黒い汚れが付いているような。

今思えば、あれが死の匂いというものだったのかもしれない。

その時の曾祖母は生死の境をさまよっていたので、死が間近にあると想像して勝手に作り上げた妄想かもしれないけれど。

祖母の葬儀中、自分は泣いていただろうか。目も顔も真っ赤にした叔父を覚えている。

葬儀の最後、火葬する直前に、顔を見た時は思わず泣いてしまった。

それでもまだ、お盆や正月にしか会わなかった人の死だ。まだ少し、自分の生活に影を落とすほど近くは無い。

 

大学在学中に、長く休んでいた同期が死んだ。

理由は知らない。憶測が囁かれていたけど、知る由もない。

寮で相部屋だった学生が泣いていた。

あまり好かれている方ではないと思っていたので、少しだけ意外だった。

自分が死んでも誰も泣かないだろうな~なんて冷めたことを考えつつ、ああ、もうアイツはいないのか、と、寂しくなった。

仏教系の大学だったので、念仏?とはちょっと違うか、でも同じ学科の学生全員で何か唱えた。

内容は覚えていない。意味も覚えていない。

ただ、今までと違って、よくわからないぼんやりとした、穴、というか、寂しさに似た、気の抜けるような感覚があったことは確かだった。

 

祖父母も両親も、よく会う親戚もいまだ健在だし、職場の人もまあまあ健康そうだし、何か起こらない限りは近しい人の葬儀に出ることは近くなさそうだ。

もし出ることがあったとして、喪服を持っていないから困るな、と思った。