安心できる遺伝

実家に帰った。四か月ぶりか。久しぶりの地元はそんなに変わり映えしていなかった。
母は先月にも会ったからそんなに変化は感じなかったけれど、四か月ぶりの父は、髪の毛が真っ白になっていた。
それに、全体的に少し量が少なくなっていた。まあ、もう年も年だし……
祖父も伯父も薄めだけれど、禿げてはいないので、遺伝的には父もそうなるんだろう。お前も大丈夫だよ、と言われた。安心……していいのかな。

今回、わざわざ帰省したのは、四月にやるはずだった母の誕生日会をするためだ。随分と遅くなってしまった。
個室の居酒屋で食べ飲み放題。料理はどれも美味しかったけど、特にエビマヨが美味しかったな。
三回くらい注文してしまった。好きだなって思われたろうな。
お酒は思ったより飲めなかった。疲れてたんだろうか。ふらふらはしなかったけれど、そんなに飲んでないのに眠くなっていた。
まだ終息したとは言えないけれど、こうやって数人で集まれるようになれたのは嬉しい。
家族みんなで集まれたのもいい。職場周りではまだ誰も発症してないらしいし。
そんな楽観的な考えで外に出てたら感染するのかもしれないけど……マスクと手洗いうがい忘れずに……

久しぶりの実家は、やっぱりどこか、自分の居場所がない気がした。
自分の荷物の置き場。帰宅してからのリビングの位置。姉の私物が溢れた自分の部屋。
どの部屋に行っても匂いを感じるのも、その一つで。
ああ、もうここは「自分の家」ではなくて「実家」という別物になってしまったんだなあ、と改めて感じた。
帰る場所ではなくて、行く場所、になっている。まあ住民票もとっくに移してるしな。
家の洗剤で洗われた、慣れない匂いのする服。ずっと袖を通していなかった、実家に置いてあった服。
普段使わないシャンプー。肌触りの違うトイレットペーパー。記憶の中よりきれいになった冷蔵庫。
庭に生えた知らない木。跡形もなくなったウッドデッキ。替わった家族の車。
少し寂しいけれど、これが自立するってことなのね……

明日も休み。今の住処に帰るのは明日にしよう。