バイト遍歴

今日はー……何も無かったな。何も無かった。仕事もほぼ無かったし、特筆するようなことも無かった。

自分の部署の仕事が無い時は、別部署の手伝いに行っている。

そこも仕事が無いので、新入社員や同僚と雑談していた。

内容もしょうもない、雨止まないね、とかなんとか、そんな感じ。

 

上司が体調不良で早退したのをもっと上の上司から聞いて、あら大丈夫かしらと思ったり。

以前体調不良で帰ったパートさんに連絡をしてみたけど返事や折り返しが無くてちょっと心配になったり。

電車の遅延や運電見合わせが発表されていたので、電車通勤している先輩に早く帰った方がいいのではと言ってみたり。

あとは……何したっけな。あ、身体をいろんなとこにぶつけたかな、壁とか扉とか。これは毎日のことか。

 

暇な時間、嫌いではないんだけれど、することがない、待つ先に予定もない暇な時間は嫌いだ。

思えばそういうのがあったバイト、あんまり楽しい記憶がないな。

ま、やってきたバイトのほとんどは楽しくなかったんだけどさ。一番楽しかったの何だろうな。

初めてのアルバイトである、アイスクリーム屋は割と楽しかった。夏は忙しさが半端なかったけれど。

商品の値段と客質の良さは比例する、と経験するための、一つの指針になった。

アイスは食事と違って必ずしも必要なわけじゃないし、100円200円で買えるようなもんじゃないし。

時間やお金に余裕がある人間が来るんだから、まあそりゃあ、それなりの人たちが来ますよ。

 

夏。アイスを大量に買っていく年配のお客さんがそこそこの割合で来る。

悩みながら、バニラとか抹茶とかの定番の物を中心に選ぶ。お盆の時期だと服が真っ黒だったりする。多分礼服。

きっと家に集まった親戚と食べるんだろう、しかも子どももいるんだろうな。

人気なのは何ですか、と聞かれたりもする。年齢や性別で差はあるけれど、とりあえず全体的に一番人気なのをすすめる。

メモを手にしている人もいる。好きなものを頼まれたのかなあ。

さすがに一人二人で十個も食べたりしないだろうから(冷凍庫に保管する人もいるだろうけど)、大人数なんだろうなあ、と想像する。

自分が作ったわけじゃないけど、自分がすすめて、包んで、渡したものが、集まりの幸せの一助になれるのは光栄だなあ、と思ったりした。

 

アイスを保管しているから、店内もそれなりに温度が低かった。

涼む目的で入ってくる人もいる。汗で髪が額に張り付いた親子が入ってくると、暑かったでしょう、ゆっくりしていってね、という気持ちになる。

店内にはイスとテーブルがいくつかあったけれど、満席になることはほとんどなかったから、少しくらい長くいられてもあんまり困ることはなかった。

子どもの分だけアイスを頼んで、食べ終わるのを待つ親を見て、いつか自分もあんな感じになるんだろうか、とか思った、っけ?そこら辺は覚えてないな。

 

閉店間際に駆け込んで、わたわたといくつかのアイスを買っていくスーツ姿の人もいた。

帰りを待っている人がいるんだろうな、と想像する。家族が帰ってきて、アイス持ってたら、自分ならめちゃくちゃ嬉しいな。

子どもだろうか、夫だろうか妻だろうか、親かもしれない。自分だけのためだったらそんな買う?ってくらいの量だったし。

まあ、もうアイスをすくう器具を全部洗浄して、あと二分くらいで明かりも落とそうか、という時に来られたら、ちょっと落ち込んだりはしたけど。それはそれ。

営業時間内なのは確かなので。ちゃんと丁寧に対応しますよ。

 

次のバイトはあんまり客質が良くなかった。というか、ピンキリ、って感じだったな……

次も飲食店だったけど、いつも同じような時間帯に来て、コーヒーを一杯だけ頼んで本を読んで帰る静かな人もいれば、店員の態度が気に入らないと激しい口調で文句を言ってくる人もいた。

職場の雰囲気、というか、店長含めた働いてる人間もあんま好きじゃなかった。

タイムカードに打刻する前に働かなきゃならないのも嫌だったな。

他にも不満を持ったことはあったけれど、半年しかやってないから、まあ、人生トータルで考えれば微々たるダメージだ。

昼だけのパートさんとは仲良くやれていた、と思うし。商品自体は好きなままだし。

 

それから二年くらい、また商品価格が高めのところで働いた。

そこは店長と従業員の関係が良くなかったっぽくて(首を突っ込みたくなかったからよく知らない)、ふわっとギスギスした雰囲気を感じていた。

個人的には店長は好きだったんだけど、自分の精神がぐずぐずな時期だったりもして、勤務中に過呼吸になったり意識を失って倒れたりした。

出勤で電車に乗る前にホームで過呼吸になったこともあったっけ。階段降りたその勢いで流れるように床に倒れたのは我ながら綺麗だったんじゃないかと今でも思う。

他の従業員とはあんまり顔を合わせない職場で、頼れる人もいなくて、ギスギスも感じて。

二年目の半ばで店長が変わって、新しい店長と合わなくて、バイトを紹介してくれた友人も辞めて少ししたところで限界が来た。

本当なら一か月だか二か月前には辞めると言わないといけなかったんだろうけど、年末に、「今月いっぱいで辞めさせてもらう」と告げて、逃げるように辞めた。

止められなかったってことは、まあ、そういうことなんだろうな。期待はしてなかったし、止められても辞めてたけど。

来るお客さんは嫌いじゃなかった。笑顔で商品を受け取る人たちにはこちらも笑顔にさせられた。

そういえば、この時が一番、性別を間違えられたかなあ。一日の中で「お兄さん」とも「お姉さん」とも呼びかけられたこともあった。

道を尋ねられることも多かったけれど、あんまり詳しくなくてちゃんと案内できなかったことが悔やまれる。

 

その後はしばらく、長続きしなかったな……面接は受けたけれど、初出勤前に怖くなって逃げたこともある。これは完全な悪。

あるバイトでは、何回やっても作業が覚えられず、店内は大体騒がしくて、狭くて、暑くて、怒られるのが怖くて、毎日疲れて、しんどかったことしか思い出せない。

今の職場の一つ前、最後のバイトは、店内でずっとラジオが流れていて、そこは少しだけ好きだった。

店長含め社員はみんな嫌いだったけどな!!仕事も全然楽しくなかったし。

商品価格が安めだったこともあってか、それはそれは色んな人が来た。

安いからたくさん売らなきゃいけなくて、それには客の回転率を上げるのが良くて、「食べたならさっさと帰れ」みたいな空気も嫌だったな。

ここも逃げるように辞めた。というか、こちらからは辞めると言ってないけど、辞めたことにされたというか。

その頃はまだ、寝るのが怖くて、夜ふかしして次の日起きられないとか、そういうのを繰り返していた。精神がぐずぐずだった。

電話に出るのも怖かったし、出勤もめちゃくちゃ嫌だった。こちらが支払う時間に見合うものが得られなかった。

ま、全部過ぎたことだけど。

 

ここと前回ので懲りて、バイトの検索条件に、店内が静かとか、商品の価格が高めとか入れて、調べて調べて、面接の応募をして返ってくるメールの文面とかも気にして。

初対面、というかまだ顔も合わせてない相手に送るメールの文面からでも、割と見える部分ってあるんだなあ、と学べた点があったのは良かったかもしれない。最後のとこ。

割と良さそう、紹介ムービーもある、履歴書要らないし(書くの面倒)、行くだけ行ってみるか、と決めたのが、今社員として働いているところ。

バイト時代と今の部署は全く違うけれど、今の部署、めちゃくちゃ良い~~~~!!

たまに人間関係で悩むけど。去年の今頃も悩んでたな。これはもう永遠の問題。

バイト時代は覚えることが多くてあっぷあっぷしていたから、本当に、今の部署に行けて良かったな……

 

社員になれたのは偶然と人の縁が重なった結果だけれど、働こう、と決めたのは自分なので。

今まで人のすすめに乗って生きてきて、自分で決めたことはあんまりうまく行かない印象があったから、うまく行っている今が人生最高点かもしれない。

できればずっとこのまま続けばいいな、と思う。職はもしかしたら変わるかもしれないけれど、自分が決めたことでうまく行くようなことが続けば。

 

……と、気まぐれでコーヒーを飲んで眠れなくなりながら、思った。

明日は朝から出勤なのに、何やってんだろうな。衝動で動くのホント良くないぞ。

体調が不調気味だからか、ちょっと吐きそうになってるし。