職場までの道にある店が改装するのか、足場が組まれていた。
そのすぐ前の道に停められた軽トラの荷台から、作業員が上にいる別の作業員に何かの部品をいくつか投げ渡していたのを見た。
その下では、何食わぬ顔で何人もの人が歩いていた。
例え上の作業員が取り落としても、足場があるから大丈夫……だとは思ったが、何かが狂って通行人の頭に落ちたりしないだろうか、と考えてしまう。
通り抜ける時は緊張した。もし部品が自分の方に向かって来たらどう避けるか、みたいなシュミレーションをしながら通った。
こういうことはよく考える。高い所にいる時には落ちる想像をするし、刃物を持っている時には落として足を傷つけてしまう、という映像が頭によぎる。
走っている車がこちらに突っ込んでくる、ぶら下がっているものが落ちてくる、コンロの火が別の物に引火して火事になる……なんてのもある。
それらの想像が現実になったことは多分一度もない、にもかかわらず、いつも考えてしまう。
だからといって別に危機管理能力が高いわけでもない。物を落としたり何かにぶつかったりは結構する。
ちょっと方向性は違うが、寝ている子供の口と鼻を塞いだらどうなるだろうか、と考えたこともある。
手に持っているものを目の前の上司に投げつけたらどんな反応をするだろうか、突然殴りつけたら怒るだろうか、駅のホームを通過する電車に飛び込んだら……
こういう良からぬことを考えるのは「侵入思考」と言うらしい。
誰しもが考える、とのことで、ああ自分だけじゃなかったんだな、と少しだけ安心した。
ついでに一つ知識を得られたのはラッキーだった。
侵入思考、別に悪いもんじゃないらしい。
それによってどう心身に影響が出るかが問題で、外が歩けなくなったり、執拗に確認する、なんてことにならなければ大丈夫なんだとか。
こういうことを考える自分は嫌な奴だな~なんて思うこともあったけれど、人である以上誰にでも起こり得る、特に問題ないものなら、無理に抑え込まず上手く付き合っていく方が楽しそうだ。
表に出さなければ誰にも気づかれないんだし、明日も元気に自転車で車道に飛び出す想像をしながら出勤しよう。