近所の商業施設がリニューアルオープンしたとかで、中に入っているお店も開店セールをしていた。
ふと興味がわいたので立ち寄ってみた。
落ち着いた雰囲気で、ちょっと物の値段も高めで、若者より少し上の年代を狙っている感じがある。
服屋や雑貨屋、惣菜屋もあり、その土地の生活の中心部になる気満々だな、と思った。
以前の姿をよく知らないので、閉店する前からそうだったのかもしれない。
普段なら絶対に行かないお店にも一度は入って、中をぐるりと見て回る。
あるお店で、ワインの販売をしていた。
すべて同じ見た目の箱の中に、販売価格より高い値段のワインが一本入っているらしい。
どれが出るかは開けてみてからのお楽しみ!というやつ。
ワインなんて数年前の誕生日に友人から貰って以来飲んだ記憶が無い。
飲み会でももっぱら甘いお酒しか飲まない。あまり強くないからだ。
しかし、その日は何故か買ってみようという気分になったので、一本買った。
中は値段より数百円高いくらいのものだったが、家にワインがあるというのは、なんだか少し大人の階段を登ったような気になる。
自分の家には開いていないワインがある。おお、大人っぽい。
こういう、小さなことで「大人になったな」と感じることがある。
初めてクレジットカードを持った時。
所得証明書を取りに行った時。
腹が立つことがあっても、まったく顔に出さずに流せた時。
「かしこまりました」と淀みなく言えるようになったと気付いた時。
よく行っていたはずの場所の名前が出てこなかった時。
めちゃくちゃ疲れた日、その疲れが翌日まで残っていた時。
徹夜がつらくなった時。
最後の方は大人というより「老い」という感じだが、経験と時間の経過という意味では、大人、なのかもしれない。
自分には、大人への憧れがある。
同年代、もしくは自分より下の年代の人間と比べて、どうも自分が幼い気がしてしまうのだ。
マルチタスクこなせるとかっこいいよなーとか、咄嗟に丁寧な言葉遣いができるとスマートだよなーとか、そんな感じ。
ワインを買うことで大人を感じることが、そもそも幼いことの表れな気がする。
大人というより、人として未熟なのだろうか。よく色んなところにぶつかるし。
早く人間になりたい、の方が気持ちとしては合っているかもしれない。
ちなみに今のところ、ワインを飲む予定はまったくない。強いお酒飲めないし。中身を確認して以来、一度も箱を開けていない。買ってごめんな。