「アレ」について

働いていると、使う言語を揃えてほしい、と思うことがある。

日本語や英語やフランス語が飛び交う職場、などというわけではなくて、物に対する呼び方が人それぞれで困る、という話。

 

例えば、大抵のお店でレジに置いてある「お金やレシートなどを置く場所」がある。

自分はそれを「カルトン」だと思っていた。何かでその名を目にしてから、長年そういうものだと認識してきたのだ。

しかし先日、カルトンが通じなかった。困ったので「お金を置く……あの平たいやつです」と言った。通じた。

他の人の話を聞いていると「キャッシュトレー」「会計盆」「アレ」と呼ばれていた。

「アレ」はどうかと思うが、流れで通じるのだからすごい。

 

 

そしてもうひとつ。職場で扱うものの中に、小さいグラスがある。

250mlぐらいが入る程度のサイズで、よくあるワイングラスを細くし、持つ部分が丸々なくなったような、可愛らしいグラスだ。

これを「ピルスナー」と呼ぶ人がいる。「ビールグラス」と呼ぶ人もいる。もちろんこれも「アレ」で済ませる人もいる。

ピルスナーはビールグラスの一種らしいので、前二つのどちらで呼んでも間違いではないが、ここでもちょっと困った。

ピルスナー」と言うと、ヘルプで来る外部の人にそこそこの割合で通じない。自分も最初、何の説明もなく「ピルスナー持ってきて」と言われて戸惑った。

ピルスナーより大きく、主にビールを注ぐ用のグラスもあり、そちらを「ビールグラス」と呼ぶ人もいる。

今ではどちらで呼ばれてもなんとなく把握できるが、たまに外部の人に説明する時、どちらで呼べばいいのか、と考えてしまうことがある。

結局、自分で運んだり、側にある同じものを指して「このグラス持ってきてください」と説明する方が早かったりする。

そういえば、まだこれに関しては、他の人が外部の人にどう指示しているのか注意して聞いたことはない。今度聞いてみよう。

 

きっと他の人はこんな些細なことなんて気にせず、なんとなく、とか、その場の流れで、とかで動いているんだろうな、と思うと自分の不器用さが悲しくなってくる。

不器用というより、悩むのが趣味なのかもしれない。哲学者を名乗るには小さすぎる悩みだ。